この記事は、IT業界への転職を検討しているけど、以下の疑問を持ってる方に向けた記事です。
- SIer(エスアイアー)ってなに?
- 具体的にはどんな仕事をするの?
- SIerは将来性がないってきいたけど、ホント?
私は、IT業界に15年在籍し、数度の転職で、色々な立場を経験してきました。IT業界への転職相談も受けているのですが「SIer」ってどうなの?という質問をよく頂くので、記事にしてみました。
※ぽりんの「転職相談所」では、この記事のような感じでお悩み解決をしてます。
IT未経験から転職する方という前提で、SIerへの転職はあり?という質問に対する結論だけいうと「IT業界での経験をつむため働くのはあり。ただ縮小する可能性は高いので、ステップアップ転職もセットで考えるべき」になります。
なぜ、この回答になるか順番に解説していきますので、気になった方は是非、最後までご覧ください。
SIerってどんな会社
「SIer(エスアイアー)」とは、System Integretor(システム・インテグレーター)の略称です。※ちなみに和製英語で、海外では通じません。
SIerは顧客の要望に応じてシステム開発をしますので、企画/要件定義/開発/保守運用などの仕事があり、範囲は広いです。したがって、プログラミングなどの技術領域だけでなく、マネジメントや資料作りなども業務範囲となります。
ITシステムを活用する企業、つまりほぼ全ての企業がターゲットとなります。
また業界構造がゼネコンのような下請けピラミッド構造となっていることから、ITゼネコンと揶揄されることもあります。(※詳細は「多重下請け構造:ITゼネコン」の章で後述します。)
SIerの分類について:4種
SIerは会社の成り立ちの違いから大きく4つに分類されます。「あー、その案件はメーカー系が強いから。」などIT業界に入ってからも、実際に会話で出てくるケースもあるので、知っておいて損はないです。
「メーカー系」「ユーザー系」「独立系」「外資系」の4つの特徴について、簡単に紹介します。
メーカー系SIer
- NEC
- 富士通
- 日立製作所
ハードウェア(コンピューター)を開発するメーカー企業のシステム開発部門やソフトウェア部門が分離・独立してできたSIerです。自社で作る大型のコンピューターに搭載するシステムを、ひとつの商品として販売するようになったビジネスモデルです。
元々、官公庁や大企業向けの大型コンピューターを開発していた関係もあり、官公庁や大企業案件に強みを持っています。
ユーザー系SIer
- NTTデータ:NTT
- 野村総合研究所(NRI):野村證券
- 日鉄ソリューションズ(NSSOL):日本製鉄
企業の情報システム部門が、企業から分離・独立してできたSIerです。自社システムの構築で培ったノウハウを活かして、ほかの企業の情報システム構築を請け負うようになることで分離・独立していきます。
親会社の業界に強みを持っている(NRIなら金融系、NSSOLなら製造系など)ことが特徴です。
独立系SIer
- 富士ソフト
- 大塚商会
- TISインテックグループ
「独立系」は、ほかの企業やグループに属さず、独自にSIerとしてシステム開発に携わる会社です。成り立ちは様々ですが、親会社を持たないため、しがらみがないことが強みと言えます。
メーカー系やユーザー系の超大手と比較すると規模が大きくないため、中小・中堅企業の案件を中心に取り扱っていることが多いです。
外資系SIer
- IBM
- オラクル、SAP
- コンサル系(アクセンチュア、PwC、KPMGなど)
「外資系」はその名の通り、海外に本社があるSIerです。厳密にいうと、これまで紹介した3つのいずれかに属するのですが、業界内では分類して認識されているケースが多いです。
オラクル、SAPのように自社の業務システムをクライアント企業に使ってもらうために、SIer事業としてシステム導入を請け負っているケースがあります。またコンサル系はシステムの上流工程である企画や要件定義を行い、開発や運用・保守はほかの会社に委託する場合が多いです。いずれにしても、メインターゲットは超大手で、億単位のプロジェクトが中心となります。
SIerが「オワコン」と言われる理由
「実際にオワコンの会社もたくさんある。しかし、全てのSIerがそうではない。IT業界自体は、伸びており、しっかり順応して伸びている企業もある。」
が、私のSIerオワコン説への回答になります。
まずは、一般的にオワコンと言われる理由について、具体的に解説していきます。
- 多重下請け構造:ITゼネコン化
- 受託開発(人月ビジネス)の限界
- クラウドサービスの台頭
1.多重下請け構造:ITゼネコン
SIerの仕事の流れは、多重下請け構造になっています。元請け(一次請け)が顧客から仕事をうけて、開発などの具体的な作業を、下請け(二次請け)、孫請け(三次請け)に仕事を流していきます。
ゼネコン=大手建設会社の仕事の受け方と似ていることから、ITゼネコンと呼ばれています。
中堅/零細企業では請けきれないような大規模なプロジェクトを大企業がフロントにたって、プロジェクト全体をコントロールすること自体は、何もおかしなことではありません。
しかし現実は、元請けが顧客と同意した無茶な開発要件/納期を、下請け、孫請けに丸投げして、過酷な条件下での開発が実施されています。納期を守るために会社に泊まり込みで働く、いわゆるデスマーチが発生するケースもあります。さらに報酬も上から下に流れる構造なので、必然的に下に行くほど、少なくなっていきます。
2022年6月29日に「公正取引委員会」がソフトウェア関連企業の下請取引などに関する実態調査報告書を公開しました。「無茶な仕事は断りたいが、継続的な取引がなくなることで経営が不安定になるため、泣き寝入りした」という違反行為が実際に発生していることが明らかになりました。そのため、多重下請構造で生じる問題への対応を強化する方針を示しております。
是正されていくといいのですが、構造的に腐敗しているので、すぐには解決しないと思います。特に、確実は発注が見込める官公庁案件にどっぷり使って、長年中抜きをしてきた元請けSIer(主にメーカー系)は危険です。
2.受託開発の限界
突然ですが、この図をご存知でしょうか?
顧客は「木を使ったブランコを作りたい」ので、一番左上の図のように説明されました。しかし、各立場の人間の理解に違いで、アウトプットに大きな乖離が生まれています。
これが示唆することのひとつには、顧客自身も本当に必要なものの形がわからず(あるいは正しく伝えられず)、顧客の説明を聞いた開発者達にもわからない(引き出せない)ことが起こり得る、という「システム開発の難しさ」があると考えます。
SIerの受託開発では、システムを納品することが重視され、要件定義の段階では発注元の意向が強く反映されます。そのため、SIerからシステムの改善を提案する余地が少ない傾向にあります。
そのため、近年はアジャイル開発(最小要件のシステムを作って、使いながら改良を積み重ねる開発手法)が注目されていますが、従来型のやり方から転換できていないSIerは非常に多いです。
つまり、どれだけ顧客に価値があるものを提供できたのかという成果主義ではなく、顧客に言われたモノを作りました。という仕事のやり方を続けているSIerは危険ということです。対価に見合う、成果があがらなければ、顧客からの発注は減っていくでしょう。
3.クラウドサービスの台頭
クラウドサービスとは、Google、マイクロソフトなどが提供しているシステムをインターネット経由で利用するのことです。メール/チャット/ドキュメント作成などで利用したことがある方も多いと思います。さらに企業の重要なデータを保管する基幹システムも、クラウドサービスを利用することも一般的になってきました。
クラウドサービスの素晴らしいところは、様々な機能/環境が用意されており、必要な時に、必要な分だけ、課金して利用できる点です。
そうなると、イチからオーダーメイドで設計/開発をしていたシステムよりも安く、早く構築できるので、顧客はクラウドサービスを利用することが増えていきます。
そのため、SIerによる個別開発の市場は縮小していくことになります。
「オワコン」ではないSIerの特徴
前章までの、SIerがオワコンと言われる理由を紹介しました。しかし、全てのSIerに未来がないというわけではないです。時代の変化に柔軟に対応しているSIer(そこで働く人達)がいます。
最新テクノロジーを取り入れている
SIerも個別開発ではなく、AWS(アマゾンウェブサービス)、Azuru(マイクロソフト)、GCP(グーグル)などのクラウドプラットフォーム上に要望に合わせたシステムを構築するサービスを提供している企業もでてきています。
クラウドサービスの「価格/スピード」、個別開発の「柔軟性」の良いところをうまく取り入れた手法です。
大きな方向性としては、個別開発の市場は縮小したとしても、設計/運用の需要は残るので、技術に強いSIerは今後も、成長していくと思います。
クラウドへの対応はあくまで一例です。IT業界では、日進月歩で新しい技術がでてきます。今後も「新しいテクノロジーを積極的に取り入れられる企業/人材は、重宝され続ける存在」なのは間違いないです。
課題解決の提案(コンサルティング)ができる
「受託開発の限界」で紹介した通り、顧客もシステムのプロではないので、本当にやりたいことを実現するために最適なシステムを理解しているわけではないです。しかし、多くの企業がデジタル化の波にのるために、システム活用を急務としております。
そこで、上流工程(企画/要件整理)で顧客が本当に必要としているものを引き出し、言語化していく、コンサルティング提案ができるSIerも、従来以上に価値が出てきています。
ちなみに、私の強みは「会話を通じて、言語化していく力」だと思ってます。笑
・顧客と対話して状況を整理する
・本当の課題を見つける
・有効な策を考える
を得意としているので、プログラミングはできない、特別な資格もないですが、ITコンサルとして色々なお仕事を頂けているのかなと。
まとめ:IT未経験からSIerへの転職はあり?
業界未経験の方が、SIerに転職すべきか?という質問に対する回答は、冒頭にも書いた通り「IT業界での経験をつむために働くのはあり。ただ縮小する可能性は高いので、ステップアップ転職もセットで考えるべき」です。つまり超オススメというわけではないです。
しかし、SIerで働くことで得られるスキルも間違いなくあります。(もちろん身につけるための能動的な努力が必要です。)
そして、身に付けたスキルでIT業界内で「軸ずらし転職」をしながら、より市場価値の高い人材になっていく入り口として、活用できると思います。
ちなみに、、超大手SIerから人材流出が止まらないのは事実です。流出先は、外資プラットフォーマー(GAFAMとか)、伸び盛りのSaaS企業、ITコンサル系の企業、などなどIT業界の中でも伸びている企業が多いですね。もしIT業界に入るなら、上記のような伸びているところをオススメしたいです。
しかし現状のスキル、転職の目的は十人十色なので「私の場合はどうだろう?」と気になった方は、個別で相談にのります。また相談してみることで、自分の考えが整理されるケースもありますので、お気軽にご連絡ください。
ご連絡は、Twitter(@POLIN_ITJOB)、またはブログの「お問い合わせ」からお願いします。
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