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【情弱ビジネスの罠】因果関係と相関関係を誤解すると議論が崩壊

仕事術

この記事でお伝えしたい結論としては「因果関係と相関関係がわかっていないと、情弱ビジネスに騙される正しい議論ができないのでビジネスパーソンとして市場価値が上がらない」ということです。

いやいや、どういうこと??

なんでそんな結論になるの??

↑と思われたと思います。実例がないとイメージできないと思いますので、よい題材を見つけました。それは、2023年1月にYoutubeにアップされた「【経済学者】成田悠輔&池戸万作が熱論!日本なぜ成長できない?」です。

経済学的な主張自体の成否は、私のような素人にはわからないです。ただ、議論のポイント/進め方という点で、反面教師的に非常に学びになりました。

この記事を読んでから実際に上記の動画を見ていただくと、より「因果/相関」について、論点設定の重要性、などの学習教材として、とても楽しく見れると思います。

動画でも解説してます!!

因果関係と相関関係について

本題に入る前に、「因果関係」と「相関関係」について説明します。

  • 相関関係:2つの変数の間の関係性を示す統計的な概念
  • 因果関係:1つの出来事が別の出来事に影響を与えるという関係

すみません。分かりづらいですね。具体例で改めて説明をしていきます。

例)相関関係があり、因果関係もある

「ストレス」と「心理的な健康」を調査すると、相関関係があります。これは強いストレスがかかっていることが原因で、心理的な健康状態が悪くなっているので、因果関係もあります。

↑相関関係があると、因果関係になっていることも多々あります。気をつけなければいけないのは、相関関係はあるが、因果関係はないパターンなので、次の例で紹介します。

例)相関関係はあるが、因果関係はない

「アイスクリームの販売数」と「溺死者の数」には、相関関係があります。しかし、アイスクリームが売れたことが直接、溺死者の原因ではないです。つまり、因果関係はありません。共通の要因となっているのは、データ(グラフ)では示されていない「気温の上昇」になります。

つまりデータ(グラフ)が相関関係だったとしても、因果関係があると証明するにはデータが足りないことがあるということです。

つまり、超ざっくりまとめると相関関係と因果関係には、以下の違いがあります。

  • 相関関係:Aが増えると、Bも増える。ただしAが原因ではないケースもある。
  • 因果関係:Aが原因で、Bが増える。

成田悠輔さん/池戸万作さんの議論が成り立たなかった理由

それでは、本題となる「ABEMA Prime」での成田悠輔さん/池戸万作さんの議論を例にして、議論として成り立たなかった理由について解説したいと思います。

※私は経済学は素人なので、主張の成否はわかりません。あくまで番組内で紹介されていた情報から議論としておかしかったポイントを説明しているとご理解頂ければと思います。

議論の概要

まずは議論の概要を説明します。

池戸さんの主張
  1. 直近20年間のGDP増加率において、日本は先進国の中で最下位。
  2. 仮に他の先進国並みに経済成長していたとしたら、一人あたりGDPは3,400〜7,200万円増えていた。(なので、政府は個人に5,000万円くらい振り込んで欲しい。)
  3. 経済成長しなかった「唯一」の原因は政府支出を増やさなかったから。根拠として、政府支出を増やした国はGDP増加率が高いというデータがある。
  4. 国には通貨発行権があるので、政府支出に財源の心配をする必要はない。
  5. 政府支出を増やすことで、お金の総量が増加させて、世の中全体で消費が活性化されることで経済成長が発生する。

↑この主張に対して、成田さんは以下の質問をしています

なぜ政府支出を増やすことが、GDP増加率を増やすことになると断言できるのですか?単純に経済成長してない国はお金も入ってこないだけという可能性はないですか?

↑この質問に対する回答が以下です。

ですから、政府には通貨発行権があるので、政府支出を増やすことができます。すると民間も含めて、消費が増え、経済成長することができます。

なんでそう断言できるんですか?数ある可能性の一つではありますが、お金をバラ撒いても物価も安定してインフレしない、貯蓄じゃなく消費に向かう、という条件が整う理由にはならないですよね。

この後の議論は「仮にお金を国民に100万円配ったら〜〜」など様々な仮説のもとに展開されますが、噛み合っていない平行線の会話になりました。

どこがおかしいのか?分かりましたでしょうか?ここから解説に入ります。

解説:質問と回答がズレている(因果関係と相関関係)

論点は「提示されているデータだけでは、GDP増加率と政府支出の因果関係がわからないので、根拠を教えて下さい。」です。

この回答が「理由は明らかです。根拠はこのグラフです。」の一点張りだったことが非常にまずかったです。

経済学に無知な私から見ると「根拠を聞かれてるのに、あえて回答をしないのは根拠がない理論なのかな?もしくは因果関係と相関関係の違いがわかっていないのかな?」という印象を持ちました。

いずれにせよ先程の「アイスクリームの販売数」と「溺死者の増加数」の相関関係のグラフを使って「アイスクリームこそが、溺死者が増える原因です。アイスクリームを販売し続ける政府こそが悪!」という主張をしているのと同じように聞こえました。

このように、実は因果関係がない相関データを使ってとんでもない理論を展開するインフルエンサーは、複雑な事象を単純化して、強い言葉で断定的に表現します。騙されないように気をつけましょう。

↑という文章を書いておりましたが、動画を再視聴して、重大な事実(私の誤解)に気づきました。

追記:実は因果関係があった。

重大な事実とは池戸さんのフリップに書かれていました。

GDP=個人消費+民間投資+政府支出+純輸出

この式が正しいのであれば、政府支出を増やせば、GDPは間違いなく増えますね。ですので、因果関係があることを説明可能な材料になりますが、議論の中では使われていませんでした。

なぜ、使わなかった?と考えましたが、私は経済学の専門知識もないですし、論者の考えを事実として確認するすべもないので、あくまで私個人がどう思ったのか?という感想です。

特に気なったのは以下の2点です。

  1. なぜ池戸さんは、この式を使って説明しなかったのか?
  2. 成田さんは、GDPの式を知らなかったのか?

なぜ池戸さんは、この式を使って説明しなかったのか?

どんなに好意的に考えても、以下の理由から、この式を使って説明しない理由は考えつきませんでした。

  • 何度も同じ質問をされている
  • ご自身で持ち込んだ資料に書いている
  • 質問の論点をズラすメリットが池戸さんにない

じゃあ、どうして使わなかったのかというと「シンプルに質問されている意図が理解できなかったのかな?」と思いました。以前、作成した「話がズレる人の特徴」に当てはまっていて「自分>相手」の思考になっていることが原因だと思われます。

成田さんは、GDPの式を知らなかったのか?

権威主義ではないですが、東大卒で、イェール大学助教授の経済学者がカンタンに表現できる式を知らないと考えるのは、ムリがあるかなと思います。

では、「なぜ、根拠を教えてください。」という質問を繰り返したのか?仮に「GDPの中に政府支出が含まれているので、因果関係にあります。」という回答が来た場合を考えてみます。

そんな数字遊びみたいな指標が、実際の国の経済状況の豊かさを測るために、適正なのか?という議論が必要ですね。なぜならGDPが成長している諸外国に問題がないかというと、そんなことはないので。

↑完全に妄想ですが、こんな切り返しなったのではないかと思いました。(私ならこの部分で議論を進めたいです。)

実際に番組内で、司会進行の平石さんは議論が平行線になってしまったタイミングで、「見るべき指標はGDPでいいのか?」という問いをお二人にされています。これは、そういった意図があったのかな?という気もしました。

改めて、質問に対して回答しないと建設的な議論にならない。ということを考えさせられる話でした。論者を変えて、改めて同じテーマの議論を見たいなと思いました。

まとめ:データは正しく見ましょう

最後に本記事で紹介した内容をまとめさせて頂きます。

この記事で知ってほしいこと
  • 相関関係があっても、因果関係がないこともある
  • 複雑な事象を単純化して、強い言葉で断定的に表現する人は信用できない
  • 質問に対して、正しく回答しないと議論にならない

本来は、因果関係/相関関係について、詳しく紹介しようと思い、「特定時期の広告/売上」「携帯電話の普及率/うつ病患者数」「学力/ピアノを習っていた」など相関関係になっているが、実は因果関係がない。という参考例も集めていました。

ただ途中で、私の誤りに気づいた後の思考転換についても面白かったので、方向性を変更して記事にしてみました。

世の中には様々な情報が溢れていますが、自分で思考した上で情報を使うことが大事なので、「こんな事を考える人もいるんだな」というサンプルになれば幸いです。

このブログではビジネスパーソンの「市場価値をあげる仕事術」「転職に必要な考え方」を紹介してますので、よかったら他の記事もご覧ください。

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